祝 創立100周年わが青春を語る③ 中学時代の宿題を還暦で提出

柳原 健(高14回)(第27次南極観測隊随行)

 南極観測は私の中学生の時に始まった。理科の青木元雄先生(中15回、後に同窓会本部の事務局長も務めた)は、授業中ご自身の経験に基づいた話を沢山して下さった。その中で南極に関係した二つの話を記憶している。「僕は南極へ行かなくてもオーロラを見ることが出来た」「もし南極へ行けたら磁石が立つのを見たい」
 それから25年、私は南極行きのチャンスに恵まれた。当時私は運輸省の船舶技術研究所に勤めていた。オイルショック後のエネルギー事情の変化で、アラスカから石油を運搬するようになった時、砕氷商船が必要になる。研究所では南極観測船「しらせ」の氷海航行性能計測を実施することになり、第27次観測隊に同行するように話があった
 咄嗟に中学時代に聞いた「磁石の話」を思い出して引き受けた。そしてこの年南半球に行けば、ハレー彗星が見られることもこの話を受諾する後押しとなった。
 ハレー彗星は復路のインド洋上で観測できたが、残念ながら磁石の立つのは見られなかった。南磁極は昭和基地から遠く離れており、航路からも外れていからだ。
 期待された結果を得られなかったこともあり、先生への報告は20年後、定年退職し実家に帰ってからになった。宿題のつもりでレポートにまとめ、岩野のご自宅に届けると喜んで下さった。先生がお元気なうちに報告できて良かったと思っている。