相談役・矢島忠和氏を悼む

同窓会長 赤 地 憲 一
 にわかに矢島忠和様の訃報に接し、愛惜の情、きわまりないものがございます。ご家族皆様の手厚いご看護と、矢島先輩をお慕いする多くの方々の、一日も早いご回復を祈る願いもむなしく、幽明境を異にされました。85歳というご長寿とは申せ、まだまだ我々同窓会にもご指導をいただけるものと存じておりました。
 八月の同窓会報「鳩」では、ご学友であられた「真田丸・十三代当主・真田幸長氏」
と題するご寄稿をいただいたばかりでございました。生者必衰とは申せ、人生の無常さを嘆かずにはおられません。
 矢島忠和様には、平成16 年からの十年間は同窓会副会長として、また平成26年からは、ひき続き相談役として、後進のご指導をいただいて参りました。今後は百周年に向けて、懸案である同窓会館建設のため、貴フレックス社・会長の久和氏、社長の隆生氏共々、格別なご支援をいただいたところでございまして、いよいよその建設にとりかかる時でありました。
 母校が平成15年に文部科学省から指定をいただいたスーパーサイエンス校、また平成24年に県下初の中高一貫校として附属中学を併設できたこと、誰よりもお喜びいただいたのは、忠和様でございましたし、平成4年に理数科設置に際しては、現在会長の久和様に大変ご指導を賜りました。忠和氏は、慶應義塾・加藤寛研究室の門下生らしく、そのアドバイスは、実に理路整然、論理的で、説得力に富んでおりました。
 矢島忠和様を知る人が等しく敬慕し感銘をうけるところは、厳しさの中にも誠意がこもり、温かさの中にも、卓越した者への使命と期待感が込められておられたこと、人や地域に対しては、深い愛情と情熱を注がれ、まさしく、そのお人柄にございました。
 ご学友・真田幸長氏について「会報」の中で、「真田家の興亡を分けたものは教育力の差であり、特に競争が激しい時代にあっては、対応力を身に着けることだ。」と書かれておられ、これこそ、貴フレックスジャパン社の「メードインジャパンの技と美と心によって、誰よりも良いものを作る」という基本理念にほかなりません。
 他方、千曲市はじめ地域の発展のためにも多大なご貢献をされました。千曲市青年会議所の初代会長や、シニア青年会議所の設立に尽力されたり、科野青年会議所「鳩塾」を通して、母校には、多大なご支援を賜りました。
 このような、忠和氏の御生前のお人柄を思うにつけ、本日のお別れは、哀惜の情、洵に切なるものがございます。しかし、中国・韓国・アジア諸地域に海外生産拠点を配し、グローバルな生産ネットワークに支えられた、貴フレックス社のご発展と矢島家の家門の繁栄を目のあたりにされ、可愛いお孫様をはじめ、数多くの人々の敬慕のうちに天寿を全うされましたことは、人を大切にされた忠和様らしく、大往生であられた、心から敬服する者でございます。
 今ここに、忠和様の御遺徳をしのび、つつしんでご冥福を心からお祈り申し上げますとともに、御家族、ご親族皆様の今後のご発展を見守っていただきますよう、また屋代高校の発展をお導き下さいますようお願いをして、お別れの辞とさせていただきます。どうか安らかにお休みください。
平成281031