活躍する同窓生

祝 創立100周年 わが青春を語る② 失敗は成功である

柳澤昭雄(高4回)

東京外語大英米・米ウイスコンシン大学院、(株)東京銀行、同ニューヨーク支店等を経て、東銀システム開発(株)でご退職。

 昭和21年旧制中学最後の生徒として入学以来6年間屋代中学高校に学び、馬齢を重ねて現在88歳となりました。12年先輩となる屋代高校の創立百周年を感謝と共に祝します。
 体が小さかった私のために母親が買ってくれた桐の高下駄で6年間も通学したことで、足腰が滅法強く発達しました。中学校に入って何よりも嬉しかったのは、生物の顕微鏡を始め物理や化学の実験道具が充実していて好奇心をこの上なく刺激してくれたことと、先生方が皆立派な紳士で服装もネクタイをキチンとしているだけでなく、教育者としての誇りと使命感に溢れておられることが感じ取れたことです。後になって自分の子供の成長を観察するにつけ、教育の力が如何に偉大で重要なものであるかを実感したものです。絵画や音楽もそうですが、不得意な体育、それから製図や算盤なども後の人生に大変役立つものでした。中でも好きな数学は本当に役に立ちました。
 小学校時代は大東亜戦争の為に家では本を読むことを禁じられました。家で本などを読んでいては娑婆に出て役立たずの人間になってしまうので、家にいる間は常に身体を使って役に立つことをしておれというのです。宿題も出来ず、学校に行って休み時間にかたづけていたので、人一倍スピーディーに事務処理をする癖がつきました。

 中学校に入る頃になって初めて世の中には日本語と全く違う英語なんていう言葉があることを知り、何としてもこれをものにして今まで知らなかった世界を拡げたいという強い願望に取り付かれました。中学ではかなり英語教育に力を入れていて三人もの立派な先生が指導して下さっていたのに、一年を終わってみたらまるで英語というものが分かっていません。これではいけないと自習を工夫することにし、今から振り返ってみても涙ぐましい努力の結果、中学二年を終わった段階で、これで自分は英語というものが完全に分かったぞという自信を持つに至りました。80歳を過ぎてから恩返しのつもりで後輩のために「世界のどこに出しても恥ずかしくない英語を自習によって身に付ける方法」という小冊子を書いたのもこのためです。〈註〉 屋代高校卒業に当たっての私の最大の失敗は、色々なハプニングも重なり大学受験に失敗したことです。このことは今でも期待して下さった先生方に申し訳なかったと思っています。しかし滑り止めに受けておいた東京外国語大学の英米科に入学し、岩崎民平という大先生に四年間薫陶を受けたことはその後の人生の礎になりました。若い人に是非伝えたいことは、「人生は失敗の積み重ねで充実する、失敗は成功である」ということです。屋代高校のモットー「質実剛健」を何時も忘れないで前向きに精進努力して下さい。

〈編集室・註〉
 柳澤氏は、米国勤務のなかで習得された「本場の英語」を、屋代高校附属中学生に伝授することを基本理念に、平成26~28年にかけて、『中学生のための英語教本』を自費出版されて、300冊を附属中学校にご寄贈された。